2017年12月30日土曜日

2017年、よく聴いたジャズ・クラシックの高音質アルバムとか

2017年もそろそろ終わりますので、今年聴いたアルバムの中で良かったものとかを振り返ってみようと思います。

ジャズとクラシックのみなので、興味のない人はスルーしてください。

2017年も色々聴きました




2017年

今年もかなり多くのアルバムを買いました。ざっと計算してみたところボックスセットなどを除いて300枚くらいで、クラシックとジャズが7:3くらいの比率です。100円ワゴンで買ったのに何度も聴き返すアルバムもあれば、3000円もしたのに一回通して聴いたきりでお蔵入りになるなんてこともありますが、これ以上買っても聴く時間が足りない、というギリギリのペースで、もうかれこれ15年以上続けています。ここまで飽きずに楽しくやっているという事実が、他人には理解しかねる趣味というやつなのでしょう。

音楽業界というのは毎年必ず、なにかしら革新的な変化があったりするのですが、私にとって2017年は意外にも充実した「安定と発展」の一年でした。

2016年にさかのぼってみると、SpotifyやTidalなど定額ストリーミングサービスが大々的にシェアを獲得し、今や地球上の全人類がそれらを日常的に使っていると思えるほどに普及しました。昔だったら「ジャズのオススメCDを貸して」と言われるところ、最近は「Spotifyのプレイリストを作って」と言われて困惑してしまいます。

私は未だにどのサービスにも加入していないのですが、1980円のCDアルバムはすんなり買えるのに、月額900円の定額契約は高いと思えてしまうのが、古臭いオーディオ脳に汚染されてしまっている証です。

2017年が自分にとって発展の一年だと思えたのは、とくにハイレゾダウンロード販売の充実ぶりによるものです。実際に各ダウンロードショップが十分な利益を出しているのかは知りませんし、よく「ストリーミングに代替されダウンロード販売は下降線」なんて言われてますが、少なくとも自分が欲しいと思えるタイトルが続々登場して、今年はとくに買いすぎに注意するほどでした。

2016年の時点では、まだ自分が買いたいアルバムが、CDとダウンロードで半々くらいだったのが、最近ではダウンロードの方が多くなり、さらにダウンロードでのみしか手に入らないアルバムも増えてきました。それでもまだCDやSACDでないと買えないアルバムもいくつかあるのがややこしいです。とくに国内限定の高音質版とかはSACDがまだまだ多いですね。CDプレイヤー引退の時期はまだ遠いようです。


ジャズとクラシックについて書く前に一つだけ、別のジャンルで個人的に嬉しかったのが、5月に発売されたクラフトワーク「3-D The Catalogue(3-D Der Katalog)」です。ドイツのテクノバンド先駆者クラフトワークの2012年~2016年にかけてのライブコンサート演目を集めて、スタジオ・アルバム曲順にまとめた集大成です。

ブルーレイ4枚組、CD8枚組、LPレコード9枚組など、多種多様なリリースがありましたが、大ファンの私は豪華アートブック入りブルーレイデラックスセットをドイツの通販から買ったので、家宝にしようと思います。ライブといってもコンソール直出しで観客ノイズの無い、ほぼスタジオ録音なので、ようするにリミックス再録全集といった感じです。安いハイライト版もありますし、古いバンドですがエレクトロ系が好きな人はぜひ聴いてみてください。ちなみにヘッドホン用3Dバージョンとやらもありますのでトリップ感は異常です。

ジャズとか

ジャズは昨年あたりのフュージョン系リバイバルの風潮がどうにも気に入らなかったのですが、ようやく一段落ついて、それっぽいアルバムは随分減りました。しかし歴史の流れに順当というべきか、今年はルーツ・R&B系のジャズアルバムが流行ったように思います。具体的にはクールとは相反するグルーヴィーな雰囲気で、エレピとかファンキーオルガンが入ってたりするスタイルです。さらにワールドミュージック系も盛り返しているので、全体的にノリが良く聴きやすいアルバムが多い一年でした。


一例として、ブルーノートからGregory Potter「Nat King Cole and Me」は甘い歌声とソウルフルなアレンジでベストセラーになりました。聴き応えのある良いアルバムです。

そんなわけで、オーソドックスな荒っぽいモダンジャズが好きな私としては、新譜の良作にあまり恵まれなかった一年なのですが、それでもいくつか気に入ったアルバムはありました。


ブルーノートで、大御所ドラマーのルイス・ヘイズが組んだバンドによる「Serenade for Horace」が良かったです。ホレス・シルヴァーの追悼盤ですが、ヘイズ本人が1937年生まれで、50年代シルバーを含む伝説的ジャズマンと共演してきた経験があるため、味わい深いノスタルジックなアルバムに仕上がっています。メンバーはJosh EvansやDezron Douglasなど現代のジャズ界を代表するアーティストで固めており、まさに近代に生まれ変わったハードバップといった演奏です。


同じくブルーノートから、Tony Allen「The Source」も気に入りました。冒頭で述べたルーツ・R&B系トレンドの一例ですが、これくらいなら自分も好きな部類です。これもドラマー主導のラージコンボで、ファンクホーンセクションにハードなアフロ・ドラミングという組み合わせがカッコイイです。それと、ドラミングよりもノリノリすぎるベースラインに気を取られてしまいます。


Impulse!レーベルからは(といっても、現在はブルーノートと同じユニバーサル系列ですが)、Bill Charlap「Uptown, Downtown」は王道ピアノトリオの綿密なアンサンブルが堪能できるので、ビル・エヴァンスとかが好きな人は特に気にいると思います。Charlapは初期のCriss Crossでのアルバムとかはどうもコテコテ甘々のスタンダード集ばかりで敬遠していたのですが、あれからもう20年経った最近の演奏は凄く気に入っています。派手な技巧や難解なアレンジはしておらず、心にスッと入ってくるのに、ベタっぽくない、正真正銘の名ピアニストだと思います。



もうちょっと気恥ずかしい甘々なアルバムとえいば、Lyn Stanleyのボーカル盤「The Moonlight Sessions Vol.1 & 2」は歌も伴奏も良くて、高音質っぷりが凄かったです。個人レーベルA.T. MusicからのSACDでの販売で、2015年の「Interludes」に続き、ハイエンドオーディオのデモ盤としてショップやイベントで何度も耳にしました。色気のある歌声ももちろんですが、高帯域で色々な音が込められているので試聴テスト用として最適です。

他にもオーディオファイル用としてオーディオショップなどで売られているジャズSACDは何枚か聴きましたが、どれも眠くなる小奇麗な演奏ばかりで自分の趣味には合いませんでしたが、上記のボーカル盤は愛嬌があって楽しめる部類です。



Criss Crossレーベルは年間リリースが数枚のみなので、出るたびに買い続けているのですが、今年は無難で通常運転すぎるアルバムばかりだと思いました。その中でもMatt Brewer「Unspoken」、Ethan Iverson「The Purity of the Turf」は聴き応えがありました。今後、レーベルらしさは保持したままで、もうちょっと現状を脱却するような企画が何かが欲しいところです。




ロックとのクロスオーバーが多いドイツのACT Musicレーベルは、今年は意外とジャズファンとしても楽しめるアルバムが沢山出ました。Stefano Bollani Trio「Mediterraneo」の遊び心満載のニュージャズ風から、Adam Baldych「Brothers」の味わい深いヴァイオリンとピアノトリオの融合、そしてMulo Francel「Mocca Swing」は二枚組で、前半はジャズカルテット、後半はミュンヘン放送管弦楽団とのビッグアレンジという変則的なアルバムまで、タイトルごとの企画の幅の広さが魅力的でした。


ジャズから離れたワールドミュージックでは、特にAmbronayレーベルからEmmanuel Bardon & Canticum Novum 「Ararat」はよく聴きました。トルコ・アルメニア国境付近にあるアララト山(ノアの方舟が発掘されたとか話題になった山です)をテーマにして、管弦古楽器にて中世アルメニアと地中海文化の交流をモチーフにしたアルバムです。


もうひとつ良かったのはWorld Circuit RecordsからTrio da Kali & Kronos Quartet「Ladilikan」です。実験音楽や世界中の民族音楽とのコラボで有名な異色の四重奏団Kronos Quartetですが、このアルバムでは西アフリカのマリ共和国出身のTrio da Kaliとの共演です。ボーカル、木琴、フルートという地元音楽のトリオ構成と、Kronosの緻密な弦楽四重奏が融合して、濁りのない豊かな音楽が味わえました。


ジャズに話を戻すと、ここ最近のジャズ復刻盤では、ヨーロッパのラジオ局発掘音源というのが一つのキーワードになっているようです。

日本でも、たとえばクラシックでは来日アーティストの放送録音テープがラジオ局に死蔵されているなんてことがたびたび話題になりますが、欧州の場合はジャズの遠征(出稼ぎ)巡業ツアーも地方ラジオ局の放送用テープが多く残されています。しかもドイツやオランダなど、記録や保管の几帳面さに抜かり無い国柄です。

これまでもテープの存在自体は隠されていたわけでもなく、海賊版CDなどでお目にかかる事はありましたが、最近になって欧州法律での著作権切れなどの理由から権利が取りやすくなり、ダムが決壊したかのように一気に大放出されています。


その中でもFondamentaレーベルは充実した一年でした。フランスDevialetと関係のあるプライベートレーベルですが、いちはやく欧州ライブ録音のリマスター復刻に取り組み、音質もそこそこ良く、176.4kHzハイレゾPCMで値段も13ユーロ程度ということで、気軽に購入できます。2016年末にはビル・エヴァンス、オスカー・ピーターソン、サラ・ヴォーンのライブアルバムが登場し、続いて2017年もデイヴ・ブルーベック、エラ・フィッツジェラルド、セロニアス・モンク、ディジー・ガレスピーとリリースされました。

どれも欧州公演ということで観客を満足させるべく王道レパートリーで気合が入っており、音響も現地の大規模コンサートホールなどなので、下手なアメリカのナイトクラブ発掘盤なんかよりも全然音が良いです。当時録音を手掛けたのもクラシックのライブ放送に精通した現地のラジオ局スタッフで手慣れたものだと思います。サウンドはやはりヨーロッパのレーベルだけあって、サラッとして破綻を抑えた感じなので、モンクとかはもうちょっとホットな方が好ましいのですが、折角のヨーロッパ遠征ということで、ヨーロッパサウンドの雰囲気も悪くないものです。


上記のビル・エヴァンス Hilversum Concertは米国Resonance Recordsでも復刻されましたが、こちらはハイレゾダウンロード用に2xHDというレーベルにてDSD256リマスターされたものが出ました。






この2xHDは他にもStoryvilleなどマイナーレーベルのDSD化も続々リリースしており、その中でも今年は特にリー・コニッツ & ウォーン・マーシュ「Two Not One」がDSD128で出たのが嬉しかったです。別名「at Café Montmartre」など色々な名前で出ているライブ録音の抜粋版ですが、長くても飽きるので、アルバム一枚でこれくらいがちょうどよいです。

それ以外ではベン・ウェブスター「Ballads」、テディ・ウィルソン「St. Louis Blues」など良作が続きました。ただしStoryille以外でもエリントンやアームストロングなど相当古い音源のリマスターも手がけており、音質がかなり厳しいものも多いので、試聴は必須です。DSD128・DSD256が必要かという疑問はもちろんありますが、こういうのは気分の問題だと思います。



日本のSSJレーベルからも、昨年からBBC Jazz 625シリーズという60年代英国BBCでの放送用録音をリマスター復刻しており、いくつか買いました。きっかけは2016年発売の1965年録音Tubby Hayes 「Interlude for Music」を偶然買ったら凄く良かったからなのですが、そこからさらにウェス・モンゴメリーとキャノンボール・アダレイのそれぞれ「BBC Jazz 625」が楽しめました。番組用なので帯域はそこまで広くないコンパクトな演奏ですが、スタジオ観覧客の拍手なんかもあり、なんだか実際に当時の放送を聴いているかのようなタイムスリップ感が味わえます。


SACD復刻盤では、11月にコロムビアが単発でミシェル・ルグラン「Legrand Jazz」をリリースしたのが良かったです。映画音楽で名を馳せた作曲家ルグランなので、コアなジャズファンからするとイージーリスニングと言われがちですが、作曲のアレンジはさすが上手で、独自の世界観が心に響きます。

このアルバムは当時コロムビアが総力を上げてプロデュースしており、マイルス、コルトレーン、エヴァンス、チェンバースなどのラージコンボ、ウェブスターにトロンボーン四本バンド、ファーマー、バードなどトランペット四本バンドと、曲に合わせた3つのバンドを駆使した錚々たるメンバーの豪華なセッションです。音質もコロムビアらしくカッチリ系のサウンドだったのがDSDリマスターのおかげでコントラストが柔らかくなり聴きやすくなりました。



Analogue Productionsレーベルは古くから大ファンなので、ジャズのリリースがあるたびに欠かさず手に入れているのですが、2017年は例年よりもずいぶん停滞しており、年間通して数枚しか出ませんでした。

欧米のアナログレコードブームはまだまだ続いているので(それ自体が驚きですが)、LPレコード盤の売上は快調なようですが、もうちょっとジャズ名盤のSACD復刻も頑張ってもらいたいです。せっかく高音質リマスターの草分け的存在なのに、ハイレゾ・DSD再評価ブームの波を逃しているようで残念です。

それでも2017年に発売されたSACDタイトルはどれも素晴らしい仕上がりで、過去に発売されたCDよりも厚みとドライブ感があり、ジャズの醍醐味をしっかり理解しているように体感できます。とくにGene Ammons「Boss Tenor」、Jimmy Forrest「Out of the Forrest」はどちらも芳醇なサックスのブローが活きており、ヘッドホンリスニングでも音痩せせず快感です。


ジャズの復刻といえば、11月には本家ユニバーサルから、新たにブルーノートのマスターテープDSD変換というのが発売されました。SACDとDSDダウンロードの両方同時発売というのが嬉しいです。

タイトルリストを見ると「サムシン・エルス」とか「クール・ストラッティン」とか、「またか・・」と思えるベタベタなセレクションなので、買うのを躊躇していたのですが、試しに二枚ほど買ってみたら、これが結構良かったです。

テープノイズは従来より多めで(これはテープの経年劣化なのか、意図的にノイズ処理を控えたのか不明ですが)、音色はこれまでのAPOやK2 XRCD、RVGなどと比べると線が細く地味なのですが、とにかくコンプレッション感が少なく、楽器の奥ゆかしさや細かな表現がじっくり見通せます。Analogue Productionのようなジャズのドライブ感みたいなエネルギーは弱いので、オリジナル盤LPの醍醐味みたいなものからは離れてしまうのですが、マスターテープに秘められた情報を引き出すということには成功していると思いました。これで他のマイナータイトルも順次やってくれればいいのですが、たぶんメジャーレーベルらしく旨味のある売れ筋タイトルの上澄みだけ搾り取って終わりでしょう。


ECMの名盤が数枚DSDリマスターで登場したのもちょっと嬉しいです。キース・ジャレット、パット・メセニーなどECMを代表する70年代のアルバムは、リリース当時は高音質だったのかもしれませんが、今聴くとちょっと古臭い作為的な感じはあったので、今回のリマスターでもうちょっと自然なサウンドになりました。

相変わらずECMらしい催眠術エコーは健在ですが(最新アルバムでもありますし)、それでも初期CDで感じられたもどかしい粗さは払拭されたのが良いです。まだリリースは数枚のみですが、願わくばジャレットばかりでなく、ECM New Seriesのポストモダン・クラシックとかもリマスターしてくれませんかね。


ECMはあまり率先して購入するレーベルではないのですが、今年は結構真面目なジャズが多く、いくつか買った中で気に入ったアルバムはありました。ビジェイ・イヤー「Far From Over」はとくに良かったです。イヤーというと過去作品では電子音楽を取り入れた売れ筋ニュージャズというイメージが強かったですが、このアルバムでは力強いアコースティック・ジャズ感があり、ダークな雰囲気の中でもしっかりスイングしています。


日本のエソテリックもあいかわらずSACD復刻を続々出しており、今年クラシックのリリースではどうしても欲しいというほどのアルバムも見当たらたなかったのですが、恒例のジャズボックスセットでVerve 6 Great Jazzというのは買ってしまいました。Analogue Productionsなどで出ているタイトルと被るのでコスパは悪いのですが、どうしてもLester Young & Teddy Wilsonの仕上がりを聴いてみたかったため、苦渋の決断です。

サウンドは相変わらずアナログっぽく柔らかく奥ゆかしい絶妙なマスタリングで、満足なのですが、このSACD限定BOX商法はもうそろそろ手に負えなくなってきました。いつでも買えるDSDダウンロードとかがあれば良いのですが、エソテリック自体が未だにSACDプレイヤーを旗艦としており、ネットワークDACなどには見向きもしない古い体制なので、当分望みは薄いようです。


2017年ジャズ新譜で個人的に一番良かったのは、Jazz Villageレーベルから、アーマッド・ジャマル「Marseille」でした。

1930年生まれの87歳ですが、未だに毎年新譜をリリースしており、しかもただの爺さんの道楽ではなく、本当に凄い演奏を披露してくれます。ピアノというのは笛吹きと違って筋力の衰えがマイナスにならないどころか、年を重ねるごとに深みが増します。

シンプルなピアノ・トリオですが(一部ラップっぽいのが入ってますが)音質が超バリバリのハイレゾで、オーディオ試聴ディスクとしても申し分無いです。ぜひ聴いてみてください。












ジャズの復刻版で今年一番凄いと思ったのは、Omnivoreレーベルからのアート・ペッパーでした。これはペッパーの奥さんが主導しているシリーズで、ペッパー死後、版権が曖昧になっているマスターテープを発掘し、婦人本人が納得する形でスタジオに依頼してリマスター復刻しているという形です。

婦人はペッパーの演奏に欠かさず連れ添っていただけあって、音楽的にも見聞の広い人なので、セッション当時の記憶やバンドメンバーの性格やその後の顛末、マスターテープ確保までの経緯なんかを綴った回想録のライナーノートも手がけており、非常に充実しています。


まず日本のATLASレーベルで晩年80年代に行った6枚のアルバムが続々登場し、さらに1957年のTAMPAレーベル「Art Pepper Quartet」を出してくれました。これは有名な「Meets The Rhythm Section」とほぼ同時期で「裏の名盤」として愛されていましたが、版権が宙に浮いてOJC移行デジタル復刻がなかなか出なかったところ、ペッパー婦人が個人的に一番好きな旦那の演奏ということでテープを買い戻したそうです。

リマスターは過度に派手さを強調せず、柔らかく澄んだ音色でペッパーの人間味みたいなものがじんわり浮かび上がってくるので、非常に満足しています。私はそこまでペッパーのファンでもないのですが、人気がある理由がわかります。良い企画シリーズなのですが知名度が低いのが残念です、願わくばCDのみでなくハイレゾリダウンロードで出してくれればもっと話題性があったと思います。あと、欲を出せば同じTampaレーベルの「Marty Paich Quartet featuring Art Pepper」も出してほしいです。

クラシック

クラシックレーベル勢は2017年も精力的に頑張っており、メジャー・マイナーレーベルを問わず、優秀なタイトルが続々登場しました。現在の音楽業界で一番活気があるのがクラシックじゃないかと思えるほど、凄いペースです。

一流オーケストラの定期コンサートは世界中で行われているので、それらをライブでハイレゾクオリティ録音する技術が確立されているため、(しかもクラシックファンはライブ音響を好むので)、低コストで高品質なアルバムが作れるからなのでしょう。特に最近は「プロデューサー兼エンジニア」という記載が増えてきました。極端に言えば、ピアニスト一人と、録音マニアのオッサンが一人いればPCM352.8kHz超ハイレゾアルバムを作って売れる時代です。


今年クラシックのハイレゾダウンロードショップで一番多用したのがスウェーデンBISレーベルの「eClassical」でした。主にBISとHarmonia Mundiの新譜のみですが、どちらもリリースが好調です。ソートしづらいとか、過去作品を探しづらいなど、ショップ自体のデザインはあまり良くないのですが、リリース直後は割引で96kHz FLACマスターファイルが1000円程度と値段が安いので、BISの高音質でこの値段だと無意識につい買ってしまいます。

1000円台ならちょっと贅沢なランチ気分で買えますが、日本のレーベルのようにアルバム一枚3000円以上とかになると豪華なディナー相当になってしまうので、心理的にそれでは財布の紐が堅くなるということは事実だと思います。







ちなみにBISは96kHzマスターですが物理盤はSACDなので、いつもどっちを買うか悩んでしまいます(大抵先に見た方を買います)。マスタリングの関係で音質は全然違うので、どっちが良いというものでもなく好みが分かれます。

今年のBISで良かったアルバムは、Vadim Gluzmanのブラームス・ヴァイオリン協奏曲、オーボエ奏者Alexei Ogrinthoukとネルソンズ指揮コンセルトヘボウのリヒャルト・シュトラウス、ヴァイオリンIlya Gringoltsのストラヴィンスキー・ヴァイオリン小品集、ヴァンスカ指揮ミネソタのマーラー5番、Trio Zimmermannのヒンデミット&シェーンベルグ弦楽三重奏、チェロChristian Polteraのマルティーヌ&ショスタコーヴィチ・チェロ協奏曲2番など、多方面にわたるレパートリーで新鮮な演奏がたのしめました。


他にも色々買いましたが、知り合いから勧められた「ロッシーニ&ホフマイスターによるコントラバスを含む弦楽四重奏」とかも、普段なら手を付けないのに、いざ聴いてみたら凄く楽しめたり、まだまだ未発掘の素晴らしいアルバムが眠っていそうで奥が深いレーベルです。


BISレーベルの看板スター鈴木雅明&バッハ・コレギウム・ジャパンのバッハ・カンタータ集は今年も勢いが衰えませんが、個人的に2017年BISで極めつけは鈴木さんのチェンバロ主導によるバッハ「音楽の捧げもの」でした。録音自体が珍しい難解な作品ですが、楽譜の解釈アレンジに依存する部分が大きいため、近代バッハ演奏の第一人者と言える鈴木さんの思考深さとセンスが光る素晴らしい演奏作品に仕上がっています。ヘッドホンで楽しむことで、重厚なポリフォニーのレイヤーがしっかり見通せる面白さがあります。




イギリスHyperionレーベルは、タカーチ四重奏団のドヴォルザーク、マーティン・ブラビンズのヴォーン・ウィリアムズ交響曲2番、アムランのラフマニノフ&メトネルなど良いアルバムが盛りだくさんでしたが、ひときわ気に入ったのが、スティーブン・オズボーンのドビュッシー・ピアノ曲集でした。タッチの粒立ちが良く、夢見る霧が晴れてキラキラ光るような演奏をずいぶん気に入って何度も聴いています。



そんな事を書いていたら、ちょうど12月29日の新譜でスティーヴン・ハフのドビュッシー・ピアノ曲集(しかもほぼ同じ選曲)が出ました。同じレーベルで、スティーブン被りで、演目まで被せるなんて何を考えてるんでしょうね。どっちも良いですがハフの方がふわっとした印象派っぽい王道で、個人的には新鮮なオズボーンの方が好きです。

毎回来るたびに思う、すごく良いサイトです

ところでHyperionは英国の真面目なクラシックレーベルなのですが、特に公式サイトも真面目なところが好感度が持てます。他のレーベルやショップの手本になるような優れたサイト運営なので、業界の人が見ていたらぜひ参考にしてもらいたいです。思い当たるだけでも:

  • 毎月決まった日に「今月の新譜」を3-4枚同時リリース
  • 月一回の定期メールでそれらの情報を伝えて、初回クーポンを添付
  • 96kHz FLAC/ALACを一貫しており、毎回同じフォーマットで手軽にPaypalかカードで買えて、ブラウザ直接ダウンロードもしくは専用ダウンローダーが選べる
  • 売上が伸びない古いアルバムはワゴンセールページで7割引きくらいで買える
  • サイドバーに英国クラシックチャートランキングからアルバム順位が逐一表示されている
  • 雑誌・新聞レビューなどが上がるたびに抜粋をアルバムページに掲載
  • トップページからPDFアルバムカタログがすぐにダウンロードできる
  • アルバムを購入すると、JPGジャケット画像、PDFブックレット、そしてepub形式のe-Bookブックレットが必ず添付される
  • 曲ごとのタグ情報が充実しており、特に歌詞(Lyrics)タグにブックレットの曲目解説が書き込まれており、DAPなどで聴きながらでも解説が読める。

・・など、とにかく売り方がしっかりしており、「月一回メールで新譜情報 → サイトで試聴チェック → 気に入ったら買う」という毎月のルーチンで顧客をガッチリ掴めています。とくに、この次は一ヶ月先まで新譜が出ないということがわかるので、買いすぎの心配がなく心理的に安心して手を出せるのも良いです。


同じくイギリスのChandosレーベルは、今年ジャン=エフラム・バヴゼのベートーヴェン・ピアノソナタ全集が完成したのでボックスが登場しました。96kHzハイレゾダウンロード版もセット販売があったので、私はそれを買いました。

ベートーヴェンは数年前にHarmonia Mundiから出たポール・ルイスのが個人的に不動の決定版なのですが、ドビュッシー全集が良かったバヴゼでしかも96kHzハイレゾ全集ということで気になって買いました。響きに頼らずスピーディーで明瞭なタッチで、現代的な演奏の最高水準に達していると思います。古臭い全集しか持っていない人は、とりあえず新しい解釈をワンセット買うならこれはかなり良いと思います。

ほかにもChandosはバリー・ダグラスのブラームス・ピアノ曲全集も完成してボックスが出たのですが、ブラームスは色々買っても厚苦しくてなかなか聴かないので、まだ手を出していません。ピアノ全集以外では、今年のChandosは例年以上にイギリス音楽に力を入れており、あまり馴染みのない日本人としてはピンと来ないアルバムが多かったです。




エドワード・ガードナーが実質的にChandosレーベルを代表する指揮者になっていますが、今年もBBC交響楽団とベルゲンフィルの両刀使いで大活躍しました。

どのアルバムもハズレがありませんが、中でもTasmin Littleとのシマノフスキ&カルウォーヴィチ・ヴァイオリン協奏曲、そして最近ではバルトーク「管弦楽のための協奏曲」など、どれも高難易度曲のスリリングな演奏で、Chandosらしいハキハキした輝かしい音作りなので、まさにハイレゾDACとヘッドホンリスニングにふさわしいラインナップです。



Onyx Classicsレーベルは、例年以上に頑張ったと思えた一年でした。一月にはヴァシリー・ペトレンコ指揮チャイコフスキー交響曲3・4・6番から始まり、年末はペトレンコの春の祭典で締めて、その間の18タイトルもどれも傑作ぞろいでした。



中でもジェームス・エーネスのベートーヴェン・ヴァイオリン協奏曲は、現代のレファレンスと言えるほどの素晴らしい快演でしたし、個人的にはキリル・カラビツ指揮ウォルトン交響曲1・2番は愛聴盤になりました。

Onyxは数ある新興クラシックレーベルの中でもとくに往年の王道に寄せた迫力のある演奏が多いので、カラヤンとかの黄金期ファンが聴いても十分満足できますし、レーベル全体として柔らかく輝かしいサウンドスタイルで、ひときわハイレゾ録音が活かされている音作りだと思います。



ロンドンのLSO Liveは今年ジャナンドレア・ノセダ指揮ヴェルディ・レクイエムや、サイモン・ラトル指揮ドビュッシー「ペレアスとメリザンド」など、これまでとは路線が違うアルバムがいくつかありましたが、どれも個人的にピンと来なかったです。


ジョン・エリオット・ガーディナーのメンデルスゾーン交響曲集シリーズは毎回素晴らしい完成度で、今年は2番と真夏の夜の夢が出ました。相変わらずSACDを買うとDSD・ハイレゾPCMをダウンロードできる贅沢仕様なのが嬉しいですが、他のレーベルではなかなk普及しませんね。


LSO Liveのようにオーケストラ団体が運営するレーベルで、今年特にクオリティに驚かされたのがボストン交響楽団のBSO Classicsでした。アンドリス・ネルソンス指揮のブラームス交響曲がとにかく凄かったです。演奏もさることながら、録音はドイツ・グラモフォンでのショスタコーヴィチと同じスタッフなので、音質もホールの音響を正確に捉えており、まさにライブ会場に降り立ったかのような素晴らしいサウンドです。

こういった自費出版みたいなので隠れた名盤が増えたのもダウンロードの醍醐味です。今サイトに行ってみたら、このアルバム以降何も出てないみたいなので、来年以降の活躍を期待しています。



オランダPentatoneレーベルは今年はひときわレパートリーの展開に尽力していました。すでにブルックナー交響曲集やワーグナーオペラ集などのシリーズが完結しているため、新たな方向性を模索しているのでしょうか。

年末には柄にも無くどういうわけかヴェルディ「オテロ」、シュトラウス「サロメ」とメジャーなオペラを立て続けにリリースしてくれました。どちらもあまり名の知れていないオケの演奏ですが、悪くなかったです。

Pentatoneレーベルのアルバムは、王道からちょっと逸れて、決定版には成り得ないのですが個性的で面白い、という事が多いように思います。演奏の解釈のみでなく、なんというか録音の音作りやプロデュースからして、これまでとは違う聴かせ方、魅せ方というのを意識させられます。今回オテロではグランド・オペラらしからぬリリカルな雰囲気ですし、サロメも薄暗い神秘性ではなくカプリッチョやアラベラの世俗っぽさがあります。理想が凝り固まった人にとっては憤慨ものかもしれませんが、すでに名盤は聴き飽きて新鮮な視点が欲しいという人には面白いと思います。



5月に発売した山田和樹シリーズの新作ファリャ「三角帽子」は特に楽しめたアルバムでしたし、アラベラ・シュタインバッハーのブリテン・ヴァイオリン協奏曲も熱気に満ちてエキサイティングです。あいかわらず高音質レーベルの代表格として、どちらも音質はトップクラスです。

Pentatoneに不満があるとすれば、公式ダウンロードショップでDSD版の値段が異常に高く、それならレコード店のセールを待ってSACDをまとめ買いした方がいいやと思えるので、新譜を買うのをためらってしまいがちです。


Pentatoneはあいかわらず往年のドイツ・グラモフォンとフィリップス録音をDSDリマスターするシリーズもやっており、これは本当に音質が素晴らしいので、どのタイトルも間違いなくオススメしたいです。契約上の事情か、こちらはダウンロード販売は行っていません。

今年も小出しで細々と続けており、とくに小澤とクーベリックのバルトークは圧巻でした。40年前の録音でここまで快演と超高音質を実現しているわけで、最近のアーティストにとってはハードルが高い世界です。



さらにPentatoneは今年クーベリックの70年代ベートーヴェン交響曲全集の復刻も続けています。これはウィーンフィル、クリーヴランド、コンセルトヘボウなど、各交響曲ごとに異なるオケと演奏するという異色の企画です。Pentatoneがリマスターを手がけることで、70年代当時の各オケのスナップショット的な聴き比べができるというのが、オーディオマニア的な価値もあります。


オランダからDSD録音の第一人者Channel Classicsレーベルですが、2017年はアルバムの数も少なく、レパートリー的にはちょっと残念でした。それでも出たアルバムはどれも凄いです。目玉は四月に出たイヴァン・フィッシャーのマーラー3番です。これぞ現代最高峰の音質と演奏を兼ね揃えた素晴らしい録音だと思います。

2016年の時点では、従来のGrimm DSD64か、新たなMerging DSD256録音装置に入れ替えるか悩んでいるという事がインタビューで書いてありましたが、今年はDSD256での配信が始まったことからも、機材入れ替えを決心したようです。移行作業は大変だったでしょうけれど、その成果はしっかり実感できます。とくにDSD256ダウンロード版ではこれまで以上に空間が広く、音楽のみでなく音響全てを余裕を持って取り込んでいるような感覚です。



フィッシャーのマーラーのみでなく、同じく看板アーティストのポッジャー「18世紀のヴァイオリン・ソナタ集」やラガッツェ四重奏団のベートーヴェン弦楽四重奏15番など、SACD・DSD256配信で凄い高音質盤揃いです。DSD256対応DACを持っているならぜひ聴き比べてみて、その差を確認してもらいたいです。



同じく超ハイレゾフォーマットの高音質レーベルというと、アメリカのReference Recordingsがあり、看板のホーネック指揮ピッツバーグからショスタコーヴィチ5番は高音質レーベルらしい派手で鮮烈な演奏で楽しませてくれました。さらに12月にはティエリー・フィッシャー指揮ユタ交響楽団のマーラー8番があり、これぞ高音質と自慢できるような超絶な立体感と分離の良さで大編成オケとコーラスを描いています。演奏はアメリカらしい雄大でストレートな解釈で、多少ドラマ性に欠けますが十分楽しめます。

なんだかんだ言って、レコードの時代から現在まで、レーベルが大迫力ハイファイサウンドを自慢したいとなると、結局はショスタコーヴィチ5番とマーラー8番が定番なのは変わらないみたいですね。


マーラー8番といえば、11月にはAccentusレーベルからルツェルン祝祭管弦楽団のマーラー8番がリリースされ、個人的に上記よりこっちのほうが好みでした。厚く力強い濃密な演奏です。アバド急逝のため未完になってしまったルツェルンでのマーラー全集でしたが、残った8番をシャイーの指揮で完結させるという感傷深い演奏だったようです。

今のところブルーレイのみでハイレゾダウンロード版などは無いのが残念ですが、こういうのはマルチチャンネルホームシアターで聴くのが理想的かもしれません。


さらにマーラーつながりで、11月にはコンセルトヘボウの自主制作レーベルRCOからガッティ指揮のマーラー2番が登場し、これもコンセルトヘボウの圧倒的な音響を十分に活かした最高級の演奏でした。Auro-3Dなる特集音響を導入したブルーレイや、通常のSACD盤、さらにオリジナルマスターDXDや、DSDマルチチャンネルダウンロード販売など、全高音質フォーマットを惜しみなく活用した、まさに高音質クラシック録音の手本になるような販売プランでした。


さらにマーラーつながりで、70年代ショルティのシカゴでのマーラー5・6・7番をタワーレコードがSACDリマスター復刻してくれたのが個人的に嬉しかったです。特に7番はこのショルティの録音で一番慣れ親しんだ思い入れがあるので、今回のSACD版は従来のLPや「DECCA The Originals」CDよりもノイズが少なくダイナミックな音質が味わえて満足できました。

タワーレコードのオリジナル企画は、選曲のセンスや音質の良さなど総合的に見て、現時点でクラシック復刻版の最有力者だと思うのですが、こちらは版権の問題もあるのか、ダウンロード配信は一切行われておらず、CD・SACDの物理販売のみなのが残念です。限定で手に入りにくいものもあるので、将来的にDSDダウンロード販売とかも行ってくれたら嬉しいのですが。


タワーレコードのリリースはマニアックなセレクションが多いので、ツボにはまらないと「そのうち買おう・・」と放置してしまうのですが、今年は気になるタイトルが続きました。とくに個人的はレオニード・コーガンのヴァイオリン協奏曲シリーズをSACDリマスターしてくれたことが嬉しかったです。

とくにコーガンとコンドラシンのブラームスは、もし「好きなアルバムをひとつだけリマスターしてくれる」というのなら、たぶんこれを選んでいた、というくらい大好きなアルバムなので、素直に嬉しいです。96kHz PCMマスターからのDSD変換だそうで、音は数年前の国内版CDとよく似ていますが、新たなリマスター処理でより音色に艶が乗ってワンランク上のサウンドになりました。



それ以外でも今年のタワーレコードは、エーリヒ・クライバーのフィガロ、ベームのリヒャルト・シュトラウスなど、決定版として昔は何度も聴いたのに、最近はあまり聴かなくなってしまったアルバムを続々リマスターで出してくれるため、改めてそれらの素晴らしさを再認識させてくれました。これからも頑張ってくれることを願っています。


復刻版関連では、タワーレコード以外でも日本のレーベルは相変わらず頑張っており、日本独特なマニアックなリリースがいくつかありました。

クナッパーツブッシュのファンには良い年で、6月には有名なフィリップスのバイロイトでのパルジファルがSACDとDSDダウンロード版で発売され、これまでの「Philips The Originals」CDよりも立体的で奥深いサウンドが味わえました。


また、2016年に限定販売したものの手に入りにくかったキングレコード発売の57年バイロイトの指環がDSDダウンロードでリリースされました。30GB超で2万円と高価ですが買ってみたところ、過度なノイズ除去がされておらず手持ちのCDよりも自然で良かったです。日本のレーベルがダウンロード配信するのは珍しいので、どういう風の吹き回しか知りませんが、ファンとして復刻を頑張ってくれたことに感謝します。


指環つながりで、年末にはステレオサウンドが定番ショルティのラインの黄金DSDリマスターというのを発表しました。新たに国内用マスターテープ発掘ということで、劣化した本国オリジナルマスターテープより高音質だそうです。

ワルキューレとかを含めた指環全曲なら良いのですが、ラインの黄金のみで14,040円というのは高価すぎて手を出していません。(オリジナルLPボックスを模したプレゼンテーションは流石に上質だと思います)。

確かにステレオサウンドが言うように、数年前に出たデッカ公式のハイレゾリマスター(白いボックス)は音圧をガンガン上げまくってノイズをカバーしている感があり、こればっかりはオリジナルLPが一番音が良いと思うので、このステレオサウンド盤がどんな音なのかは気になっています。

こういうのを本物のボックスセットと言います

ショルティの指環といえば、私は個別オリジナル盤LPとは別に、全集セットで映画ロードオブザリングばりの革張り黄金レリーフ細工豪華絢爛ボックス(プラスチックですが)も持っているので、この機会に自慢したいのですが、もしこのデザインで全集DSDリマスター3万円とかだったら欲しくなってしまうと思います。


海外に話を戻すと、旧メジャーレーベルの中では、ワーナーがひときわ目立った一年でした。最近になって、長らく凍結してきた傘下エラート(Erato)レーベルの名前を復活しましたが、ただ単に安易なサブレーベルとして利用するのではなく、原点であるフランス音楽を中心に独自のレパートリーを積極的に打ち出しており、毎月なにかしら欲しいアルバムが続きました。




マイナーオペラ復刻から歌曲もの交響曲にバロックと、2017年は手広く60タイトルほどリリースしており、中でもフィリップ・ジョルダンのムソルグスキー「展覧会の絵」や、ルノー・カピュソンやエマニュエル・パユなどトップソリスト勢によるドビュッシー「ソナタ・トリオ集」など、一年を通して良作が続きます。個人的には歌曲アリア集のMarianne Crebassa「Secrets」やSabin Devieilhe「Mirages」など新生エラートらしさを感じることができて大いに楽しめました。


年末には、エラート総決算というべき、稀に見る大作のベルリオーズ「トロイヤの人々」をリリースし、多くのクラシック雑誌で絶賛されました。DiDonatoやCrebassaなど、エラートレーベルのスター歌手勢はもちろんのこと、Lemieux、Degoutなど、最近Naïveレーベルなどで活躍していた歌手が一同に集結しており、特に私はLemieuxのファンなので大役カサンドラを任されているのに喜びました。

なんだか、60年代レコード黄金時代には実現できた、オールスターキャストのドリームチームオペラ録音みたいです。広告によると、ここまでのビッグアーティストを一同に揃えるスタジオセッションは予算的に無理なので、「もうトロイヤの録音は不可能」と言われていたところ、あくまで「ライブ公演」という体裁をとりながら、録音設備だけはスタジオばりの凄い準備をすることで、念願が達成できた、ということです。

これまで「トロイヤ」は(新旧コリン・デイヴィス盤など)4時間はさすがに長すぎて最後まで聴き通すことが無かったのですが(大抵後半に飛ばします)、今回のアルバムは最初から最後まで超絶ソロリサイタルが続くような派手さにグイグイ引き込まれます。


エラートの話題が続いてしまうのですが、実は今年密かに一番長く楽しませてもらったのが、エラートが出したクリュイタンスのボックスセットでした。40年代のモノラルから晩年1966年までの録音なので音質はバラバラで、ファン以外にはお勧めできませんが、それにしても上質な企画だと思います。

こういう名盤が山ほど入ってます

いわゆる寄せ集めの叩き売りボックスではなく、ほぼ全編新規リマスターで、ベルリン・フィルとのベートーヴェン交響曲全集や、ラヴェル管弦楽全集、名盤の誉れ高いオイストラフとのベートーヴェン・ヴァイオリン協奏曲、エンジェルシリーズ盤フォーレ・レクイエム、ショスタコーヴィチ自作自演のピアノ協奏曲など、どれもLPレコードマニアには愛着のある名盤ですが、なかなかこれまでCDでは音質に悩まされた録音ばかりでした。

強いて言えば「管弦楽」全集なので、名盤のドビュッシー「ペレアスとメリザンド」やグノー「ファウスト」などクリュイタンスが手がけたオペラが入っていないのが非常に残念です。これはまた別の機会に出して欲しいです。(「ファウスト」バレェ抜粋は入っているのは嫌がらせでしょうか)。

とくにこのボックスが素晴らしいのは、65枚CDボックス発売と同時に96kHzハイレゾダウンロード版も出しており、しかも「モノラル期」「ステレオ期」の前後編で別々に購入できるという、凄まじくユーザーフレンドリーなリリースです。他のレーベルでは、まずCDで出して数ヶ月後にSACDでその後44.1kHzダウンロード販売で最後にハイレゾ販売、みたいな消費者を馬鹿にした酷いリリースもあるので、この潔さを見習ってほしいです。


エラートではないですが、ワーナー本家から10月に発売したクリスチャン・フェラスのボックスセットも良かったです。レーベルを渡り歩いた名ヴァイオリニストなので、今回は初期のHMV・テレフンケンのみで、デッカや後期ドイツ・グラモフォンは入っていない限定的なボックスですが、そのためこれまでなかなか手に入りにくかったアルバムが揃います。バルビゼとの有名なエネスクや、プレートルとのベルグなどが入っていますし、これもCD13枚ボックスと96kHzハイレゾダウンロードの同時発売という良心的なリリースでした。


他の旧メジャーレーベル系も負けておらず、ユニバーサル傘下ドイツ・グラモフォンは老齢のポリーニがまだ看板として頑張っているのが凄いですが、彼以外でも新人の若手ピアニストを多く発掘しているのが新鮮でした。



コンクール優勝契約とか諸事情があるのでしょうけど、毎月のごとく新人イケメンピアニストみたいなアルバムが出るので混乱するのですが、中でもここ数年はダニール・トリフォノフを若手ホープの筆頭格として育て上げているようです。リリースを焦らず、しっかり練られた年間1~2枚というスローペースなのが好感が持てます。

2015年のラフマニノフ、2016年のリストと絶賛されましたが、2017年はショパンという、まさに王道ピアニストルートで成長を遂げています。さらにレーベル大御所のムターとのシューベルト「鱒」も出したことも、若手イケメン風から髭面になったのも、もはや新人ではないという成長の証でしょうか。



ドイツ・グラモフォンは若手のみでなくツィマーマンやキーシンなどベテランも今年は佳作を出しています。それ以外では古いアルバムの(リマスターではない)詰め合わせボックスセットが多く、なんだか近頃のドイツ・グラモフォンは「ピアニスト新譜とカラヤン復刻ボックスのレーベル」、みたいなイメージになってしまいました。


極めつけは(もちろん買ってませんが)「カラヤン生誕110周年記念356枚ボックス」とかいう、本当に記念碑サイズの巨大なセットが出ました。こんなの誰が買うんだと笑っていたら、身の回りで予約注文した人が二人もいたので、クラシック業界は盛況ですね。相変わらずコロンビアとEMI期は入ってないのでコンプリートではないのが残念です。

余談ですが私にとってカラヤンはEMIでのオペラ群が最盛期だと思うのですが、そのEMI全集ボックスセットは2007年に出たものの、EMIがワーナーに吸収されて以来消えてしまったので、これこそ後世に残すためハイレゾリマスターBOXで出すべきだと待ち望んでいます。


一方同系列のデッカも負けじとパヴァロッティ没後10周年記念101枚ボックスを出して、公式ボックスセット巨大化戦争が繰り広げられています。もちろん名盤の数々が一気に手に入るのは便利ですが、相当な邸宅でないと置き場に困ります。

サザーランドとの一連のオペラはもう96kHzハイレゾでバラ売りしているので、あえて買い直すことはありませんが、なぜかイル・トロヴァトーレだけハイレゾ版が出てないので、このボックスのは新規リマスターなのかどうか気になってます。



デッカは今年アシュケナージとショルティの復刻再販にも力を入れており、7月にはショルティ指揮ウィーンフィルのサロメ&エレクトラがリマスターされブルーレイとハイレゾダウンロードで出ました。

想い出深い往年の名盤なので買ってみたところ、確かに音は良くなっているものの、そもそも60年代当時のデッカ録音自体がスタジオマジック的な音響効果を積極的に導入していたこともあり、ハイレゾリマスターだと細部まで聴こえてしまい、逆に作為的でバカっぽくなってしまう部分もありました。オバケが陳腐なオバケ屋敷になったようなものでしょうか。


一方アシュケナージとショルティのベートーヴェン・ピアノ協奏曲集も出ましたが、こちらは最近の録音と比べても遜色無い鮮やかさで楽しめたので、十分お薦めできます。今でこそ名物指揮者ですが、アシュケナージはやっぱり凄いピアニストだなと再確認できました。


そういえばアシュケナージは今年BISレーベルでもフルート奏者Sharon Bezalyとフランクとフォーレのヴァイオリン・ソナタのフルートアレンジという渋い録音を出しましたので、ピアニストの血は衰えてないようです。これもコンセプトは良かったのですがフルートばかり1時間聴くと結構飽きてきます。



DECCAはやたら復刻版が多いですが、新規録音もそこそこあり、どれも辛気臭いジャケットですが、チェコフィルでビエロフラーヴェク指揮のドヴォルザーク「スタバト・マーテル」、ビシュコフ指揮チャイコフスキー「マンフレッド」など、やはりチェコフィルを録音できるのは現在デッカの強みだと思います。

今年はビエロフラーヴェクが亡くなってしまい、今後このコンビのアルバムが聴けないと思うと非常に残念です。それでも遺してくれた録音はまだあるらしく2018年1月には追悼アルバムということでビエロフラーヴェク&チェコフィルの「我が祖国」が出るということで、大いに期待しています。

チェコフィルと言えば、最近ヤナーチェクのオペラ新譜を全然見ないので、どなたか新し目でお薦めがあったら教えてください。もうマッケラスは聴き飽きましたし、ビエロフラーヴェクとチェコフィルで全集を作ってくれたらベストだったのですが、もう叶わぬ夢です。もうちょっと長生きしてくれたら必ずやってくれたと思うので、残念でたまりません。



最後に、最近個人的に応援したい新興レーベルは、フランスのEvidence Classicsです。Harmonia MundiやAliaVox、Naiveなどで90年代から現在まで多くの名盤を手掛けたエンジニアNicolas Bartholomée氏が独立して立ち上げたレーベルで、2014年頃からちらほらとタイトルを見るようになりました。

あくまでレーベルを跨ぐエンジニアとして本業の傍らといった感じですが、さすがベテランの目利きの良さか、演奏者のクオリティもそこそこ高くハズレが少ないです。こういうレーベルは、凄い新人を発掘してもすぐに大手に引き抜かれて苦汁を舐める事が多いので前途多難だと思いますが、これからも頑張ってもらいたいです。

2017年の個人的なオススメはピアニストCyril Huvéが超弩級102鍵盤ピアノを使ったリストソナタと、ヴァイオリンFanny RobilliardとピアノPaloma Kouiderのデュオによるシマノフスキー神話・ドビュッシーヴァイオリン・ソナタです。

おわりに

今年も今回紹介した以上に色々なアルバムを買ったので、ジャケットを眺めながら書いていたのですが、改めて思い返してみると、ハイレゾフォーマットが当たり前になり、むしろ意識しなくなった一年だったように思います。

ジャズ・クラシックともに96kHz・24bitが製作工程でマスターとして完全に定着しているので、それでダウンロード購入するのが最善かつ一番安いです。新譜で1000円台という相場が当たり前になったハイレゾダウンロードのおかげでアルバム単価が下がって、同じ予算でも購入枚数が増えたのは確実です。

ジャズ、クラシックともに、往年の名盤のリマスターも後を絶たず、2017年も続々とリリースされています。

これまで廃盤になっていて手に入らなかった愛聴盤が待望のハイレゾリマスター、とかいうのは素直に嬉しいです。(CDの廃盤は思いのほか多いです)。

しかし冷静になって考えてみると、もう何度目のリマスターか知りませんが、出がらしのようなブルーノートとかの40分アルバムに最新リマスターというだけで4850円も払うのは異常です。それでも(私みたいに)買う人がいることを見越しての価格設定でしょうけれど、トータルで何枚売れているのでしょう。なんだか「初心者は廉価版BOXで十分」「高音質は少数精鋭マニア専用だから高価」という屈折した売り方は気に入りません。

やはりジャズやクラシックは手がけている人間そのものがマニア思考でエリート志向なので、「ここまでやったのだから高くても十分納得できるクオリティ・・・」なんて陶酔しているのかもしれません。折角高音質リマスターしたのなら、それを求めやすい価格の主力商品として置くことで、初心者でも聴き惚れるような音楽の良さを広めてほしいです。ようするに安くしろということです。

その点ポピュラージャンルは、今年話題になったローリング・ストーンズやビートルズ復刻リマスターとか、アルバム単体はそこそこ安価で買えて、一方マニア向けには豪華付録のデラックス版にするという二分化で要領よくやっています。クラフトワークもそうでした。もちろん売れる数量のケタが違いますが。

日本のハイレゾダウンロードショップのジャズ・クラシック部門を見ると、初心者には「ワインに合うベストピアノジャズ」「冬のプレミアムヒットセレクション」みたいな謎のコンピアルバムが埋め尽くしているのが、海外ショップでは見られない日本独特の文化です。つまり演奏よりも雰囲気を欲しているということでしょうか。(ところで、日本は「プレミアム」という無意味な英単語を禁止にしてほしいです)。

また、今年はダウンロードショップが乱立している事もあり、良いサイトと悪いサイトの差がハッキリしてきたように思います。独占タイトル以外では売り物のデータは同じなので、あとはサイトの使いやすさと情報の充実具合での勝負です。最終的にはアマゾンみたいな一強が残ることになるのでしょうか。同じアルバムだと思って買ったら、あるサイトではPDFブックレットが付いてこなかった、なんて事も多くあります。(そういうときはショップではなくレーベルに問い合わせると、結構親切に対応してくれたりします)。

日本だと、Victor HD Musicが今年5月末にいきなりサービス終了したのが驚きました。確かに後出でそこまで目立ったセールスポイントの無いショップでしたが、終了するとは意外です。

ビクターは結構好きなレーベルなのですが、自社のハイレゾ紹介サイト(Victor Studio HD-Sound)が更新無しで放置され、購入先リンクもサービス終了で死んでたりとか、運営にもうちょっと投資してもらいたいです。ビクターのハイレゾダウンロードは今年「けものフレンズ」など相当ヒットしたコンテンツがあるのに、レーベルサイトは充実していながら、スタジオコンテンツサイトは死んでいるという、これこそオーディオマニアとして残念でなりません。旬なコンテンツを売るだけでなく、もっとブログなどで録音工程、音作りのこだわりやセッティングとかをどんどん発信すれば、近頃のハイレゾDAC&ヘッドホンファンの興味を惹いて、マイナーアーティストの宣伝にもつながると思います。ウェブサイトは代行デザイン業者の作り置きではなく、社内専属チームで毎日更新するという時代になった今、各企業の考え方の違いが鮮明になってきたように思います。


海外を中心に、DSD256やPCM352.8kHz DXDのような超ハイレゾもリリース数が増えてきましたが、これもあまり意識しなくなりました。つまりDXDだからといって興味本位で積極的に買ってみる、という時代も過ぎたので、演目や試聴サンプルの演奏が良くなければ買わないということです。

そんな超ハイレゾファイルの音質メリットについては諸説ありますが、肝心なのは、フォーマットの論理限界などではなく、エンジニアのセンスや、録音スタジオの機材・環境に依存するということです。

極論を言えば論理限界なんてCDでも必要十分なのですが、古くからあるCD前提のスタジオ機器では、CD相当のポテンシャルですら十分活かせるだけの設備ですらない場合が多いです。多重ミックスを重ねることで微小信号は埋もれ、ダイナミックレンジは潰れ、高周波には変な信号が混入しています。

そして、ハイレゾブームになる今日このごろまで、そんな20年前のスタジオ機器やワークフローをそのまま使い続けてきたスタジオが圧倒的に多かったです。趣味ではなく業務なので、CDでリリースすならそれで必要十分、という割り切りでしょう。DTMの作曲家とかは、未だにWindows XPのProToolsで16bitのサンプル音源を重ねて貼って、古いプラグインを通して音楽をコラージュしてたりします。重ねるたびにダイナミックレンジが悪化し、位相はズレて、それでも良い音楽は作れます。

DSD256やDXDがオーディオマニア的に面白い理由は、それらフォーマットを実現するために、録音スタジオが最新機材に買い換え、A/D変換機はもちろんのこと、マイクやミキサー、パソコンソフト、ケーブルから照明電球に至るまで、徹底的な次世代化を図るきっかけとなったことで得られたサウンドです。

さらに、過度な多重ミックスやプラグインエフェクトは使えず、可能な限りダイレクトな信号経路が要求されます。これまではパソコン上でどうにかしていた音響修正も、DXDとなれば録音スタジオ空間自体が完璧でないといけません。

では32bit限界まで録音して24bitに編集すればどうかと思うかもしれませんが、現在のマイクやケーブルでは24bit相当のレンジですらギリギリ実現できません。つまりアナログ雑音の限界まで録れて多重編集のヘッドルームを考慮したのがDXD 32bitで、それをそのまま直録DXDで販売するか、編集マージンを経て96kHz 24bitで販売するかというどちらかに落ち着いたのがハイレゾ録音の現状だと思います。

これまで16bit録音を24チャンネルミックスして、それぞれにプラグインリバーブをかけていたCD時代から比べると、大幅に音色が変わると思います。(未だに16bit録音が多いのも、使い慣れたプラグインエフェクトが24bit対応じゃないとかの理由が多いです)。

その録音工程の機材変更や意識改善の全体を含めて、ハイレゾ音源はやっぱり音が良いな、と思えるわけです。

そのような高音質化をSACDの時代から着々と行ってきたPentatoneやChannel Classicsなどでは、さらにハイレゾ化したからといって飛躍的に音質向上するわけでは無いと思いますが(それでもChannelのDSD256は凄いです)、ブームのおかげで、似たような「生音重視」のワークフローが他の大手レーベルでも導入されるきっかけになったということでしょう。

そんなわけで、2017年はクラシック・ジャズともにハイレゾダウンロードがメインストリームとして定着して、新譜購入は自然とダウンロードショップで行えるようになったということ自体が、オーディオマニアとして願ってもない嬉しい時代になったと思います。つまり定着までの大台を乗り切ったので、最近はメジャーレーベルのアルバムを買っても十分高音質で、以前のように編集やフォーマットに関して目くじらを立てる必要も少なくなり、本題である音楽そのものが満足に楽しめるようになってきたわけです。

大袈裟に思えるかもしれませんが、ここまで来るのに、90年代のダイナミックレンジ圧縮問題や、過度なマルチマイク録音、アナログに劣る下手なデジタルトランスファー、SACDやATRACにDRMなど排他的フォーマット戦争や、非可逆圧縮MP3など、オーディオマニアとしてはあまり満足とは言えない時期が続いたため、今現在が一番充実した安定と発展の時代を迎えているように思えてなりません。


唯一まだ望むものがあるとすれば、それはサラウンド音源再生の簡易化です。クラシック新譜はほとんどと言っていいほどマルチチャンネルサラウンドで録音されており、SACDやブルーレイなどはサラウンドが欠かせないのですが、実際それらを活かせる人はあまりいないと思います。陳腐なサウンドバーやホームシアターセットでは満足できませんし、エソテリックとか高級オーディオのフルサラウンドなんて数千万円なので大富豪でないと無理です。ヘッドホン業界もなぜか消極的です。ブルーレイ普及の最短ルートはアニメや映画などのハイレゾサラウンドかもしれません。

どんなに超ハイレゾ録音とか言っても、左右ステレオというのは1950年代から一貫して変わっていない部分です。人間の耳は二つしか無いので、左右ステレオで十分だというのも一理あるのですが、そこはどうにか、近頃流行りのDSP音響補正とかで、実際のハイレゾサラウンド音源を手軽に体験できるようなパーソナルオーディオシステムがあればと思っています。というか、今現在音源が豊富にあるので、それを手軽に活かせないのは惜しいです。

そんなわけで、次は2017年に気に入ったイヤホン、ヘッドホンとかを思い返してみようと思います。