2015年4月14日火曜日

Onkyo HF PlayerとRadius Ne PLAYERを比較してみました (iOS版)

iOS用のハイレゾ対応オーディオプレイヤーというと、オンキョーのHF Playerが一番メジャーですが、このたびRadiusからNe PLAYERというアプリが発売されたので、購入してみました。

Ne PLAYERはApp Storeにて1800円で販売されていますが、初回セールということで2015年4月21日まで1080円に割引されています。対するHF Playerは1000円なので、まあライバルソフトですね。



Onkyo HF Playerの再生画面

Radius Ne PLAYERの再生画面

基本的にはiOS付属の「ミュージック」アプリと似たようなインターフェースで、さらにハイレゾ音源ファイルに対応させたような感じです。この手のアプリは、頻繁に手にとって操作するので微妙な操作性の違いが意外と重要になってきます。上記のスクリーンショットのように、それぞれの再生画面は似たような感じですし、どちらもUSB DAC対応、ハイレゾPCM、DSD再生可能で、アップサンプリング機能もあり、など基本的なスペックは満たしています。

音質差については、大抵のユーザーはLightning端子からUSB DACを接続して使っていると思うので、ソフト単体の音の違いよりもDACによる影響のほうが支配的だと思います。個人的には各ソフトのアップサンプリング機能をONにした場合は多少の違いが感じられますが、結局はアプリの微妙な音質差よりも日常的な使い勝手を重視したいです。

まずiOSの根本的な問題として、iTunes経由でしか楽曲をデバイスに転送できず、なおかつiTunesはハイレゾ音源をデバイスに転送させてくれない、というしょうもない制限があります。iTunes自体はハイレゾPCM音源を問題なく管理再生してくれるのですが、iPhoneやiPod Touchなどにこれらを同期転送できないのは、時代錯誤というか、オーディオマニアにとっては致命的な問題ですね。さらにiTunesはDFF、DSFなどのDSDファイルも管理再生できないため、また面倒なことになります。(DFFをDoP ALACに変換するといった裏技もありますが・・)。

つまり、44.1kHz 16bitなどの一般的なCDクオリティの音源ファイルはiTunesから普段通りに同期して、それ以上のハイレゾファイルはアプリ内に共有ファイルとして転送しないといけない二度手間があります。これについてはHF PlayerもNe PLAYERも同じなのですが、残念ながら各ソフトは双方のフォルダにアクセス出来ないため、HF Player用にデバイスに転送した音源ファイルはNe PLAYERからは見えない、という問題があります。
ハイレゾファイルの保存フォルダは各アプリで別々です・・・

これもiOSにおけるしょうもない制限で、アプリが他のアプリと干渉してはいけない(ハッキング防止)というルールのため、アプリ開発者の悩みの種です。このあたりはAndroidのほうが楽でいいですね。Musicと名づけたフォルダに適当に音楽を入れておけば、どのアプリも勝手に読み込んでくれるので簡単です。


楽曲をデバイスに転送して、アプリを立ち上げてから設定画面でライブラリを読み込むのは、どちらのソフトも同じような手順ですが、Ne PLAYERのほうが若干時間がかかりました。


HF PlayerではDSF、ALACのメタデータは完璧

HF Playerは最近のバージョンではかなり頭が良くなっているので、ライブラリ表示に関してはあまり問題が思い当たりません。メタデータはちゃんと読み取りますし、コンピフラグやアルバムアーティストなどのタグもしっかりと活用してくれます。



NePLAYERではDSFファイルのタグがおかしくなっている

現行バージョンのNe PLAYERではタグは正常に表示されます


Ne PLAYERのほうは、現バージョンでは残念ながらDSFファイルでタグの文字化けが発生してしまい、ライブラリがめちゃくちゃな状態になってしまいます。HF PlayerやJRiver、Audirvanaなどで問題なく編集や表示できているタグなので、なにかNe PLAYER上での読み取り方法にミスが有るのかもしれません。修正を期待しています。(追記:現行バージョンでは修正されました)。

下部のアイコン配置を編集できるのは嬉しい

iTunes転送楽曲は、サンプルレートとフォーマット選曲ボタンが使えない

ライブラリの下部にあるアイコンは、HF Playerでは配置変更ができないようなのですが、Ne PLAYERでは変更可能です。個人的には聴きたい音楽を「ジャンル」や「アルバム」ボタンから選ぶ事が多いので、邪魔な「プレイリスト」や「曲」アイコンを消すことができるのは嬉しいです。代わりに、Ne PLAYERのセールスポイントの一つである、「サンプルレート」と「フォーマット」で選曲するアイコンを追加しました。

残念ながら、iTunes同期音源とハイレゾ音源は別画面で管理されているので、ハイレゾ音源側でないと「サンプルレート」と「フォーマット」ボタンが使えないようになっています。全部の楽曲を統一管理してほしいのですが、なにかこれも開発上の制約があるんでしょうかね。

細かいことですが、個人的にはつねにアルバム単位で音楽を聴くため、選曲する際に「ジャンル」→「アルバム」といった選び方をしたいのですが、どちらのアプリでもできません。HF Playerでは「ジャンル」→「アーティスト」→「アルバム」→「曲」といった流れですし、Ne PLAYERは「ジャンル」→「アーティスト」→「曲」になります。Ne PLAYERのほうがiOSのミュージックアプリと同じ挙動です。以前のiPodみたいに、ジャンル選択後にアーティストかアルバムのリストを選べると嬉しいのですが、なかなか思うようにはいかないです。


HF Playerの設定画面
Ne PLAYERの設定画面

どちらのアプリにもアップサンプリング機能がついていて、設定画面でON/OFFの切り替えができます。個人的にはDACまでネイティブに送り出したいので普段このようなギミックはOFFにしていますが、面白い機能だとは思います。

アップサンプリングをONにすると全体的にステレオイメージやきらびやかさが向上するようで、多少高音寄りのギラッとした音色になります。Ne PLAYERのほうが若干この傾向が強いように感じましたが、気になるほどの違いではなかったです。ちなみにアップサンプリングのON/OFF切り替えは再生中でも可能ですが、Ne PLAYERのほうが反応が速く、HF Playerは数秒の待ち時間があります。

アップサンプリングONで、44.1kHzは176.4kHzに拡張される


96kHz音源も192kHzに拡張される

どちらのアプリも、いわゆる整数倍アップサンプリングが可能なので、たとえば44.1、88.2kHzは176.4kHzにアップサンプルされ、48、96kHzは192kHzになります。

Ne PLAYERのセールスポイントで、再生中にスペアナが表示されてハイレゾ音源だとちゃんと高周波が再生されているか確認できるというギミックがあります。この辺については視覚効果という意味では面白いですし、44.1kHz音源をただアップサンプルしただけの「偽ハイレゾ」もよく販売されているので、楽しい試みだとは思います。ただ、高周波も大事かもしれませんが、実際には縦軸の24ビットのダイナミックレンジという点も重要だと思うのですが、そっちもなにか分かりやすい視覚効果にできないですかね。

HF PlayerでDoP DFF再生中

Ne PLAYERでDoP DSF再生中

ジャケットをタップで曲情報が表示される

今回はUSB DACにOPPO HA-2を使ってみましたが、ハイレゾPCMもDoPも問題なく再生できました。DAC認識時の挙動も各アプリとも似たような感じです。


HF Playerで5.6MHzDSFファイルをDoP再生中

Ne PLAYERで5.6MHzDSFファイルをDoP再生中

 ちなみにDoPでDSDファイルを再生している際には、スペアナはイルミネーションみたいな効果に変わります。グラフは5.6MHzまで表示されているので、試しに2Lレーベル(http://www.2l.no/から配布されている5.6MHz(128x)DSFファイルをダウンロードしてみたところ、HF Player、Ne PLAYERともに問題なく再生できました。これにはもちろんOPPO HA-2のような5.6MHz DoPに対応しているUSB DACが必要です。


HF Playerのイコライザー


Ne PLAYERのイコライザー

イコライザー機能についてはどちらも色々とプリセットやマルチバンドなど多機能に頑張っていますが、自分は使わないのでOFFにしています。

ピュアオーディオ的な観点ではイコライザーはあまり縁がないですが、それよりも高性能なクロスフィード機能を追加してほしいです。
Grace DesignやSPL、iFi Audioなど、アナログ回路のクロスフィードは非常によく使うのですが、デジタルソフトではまだ良いものに遭遇していません。ぜひ聴感上優れているクロスフィードを開発してほしいものです。

HF PlayerとNe PLAYERの両ソフトを色々と使ってみましたが、どちらも普段使いに耐えうる素晴らしいアプリなので、オーディオ関連の出費として1000円程度は非常に安いと思います。Sonic Studio Amarraみたいに1万円もするソフトもありますしね。

Ne PLAYERについてですが、後発ながらここまで急速にHF Playerに迫る完成度のアプリを作り上げたことに驚いています。HF Playerのパクリなどと言われてしまいがちですが、選択肢が多いのは良いことです。しかし、値段のこともありますし、わざわざすでに熟成しているHF Playerと競合する必要はあるのかな、と疑問にも思います。

これからの開発とアップデート次第でHF Playerを超えるソフトになってくれることを期待しています。今のところDSFファイルのタグが文字化けしてしまう問題を解消してくれれば、普段使いできるレベルだとおもいます。それと、ひとつ気になったのは、iOSの言語設定を英語にしても、Ne PLAYERは日本語のままでした。英語対応じゃないんでしょうかね。(追記:どちらもバージョンアップで修正されました。素晴らしいです)。

また、Android版のNe PLAYERも発売されているのですが、サイトの情報によるとどうもアップルロスレスに対応していないらしいので、主にiTunesでアップルロスレスを使っている自分にとっては非常に残念です。アップルロスレスはオープンソースでもうアップルの手を離れているので、FLAC同様に対応させるのは難しくないはずです。

最後に、一番の願望は、どうにか楽曲の転送をエクスプローラやFinderなど、iTunes依存でないようにする方法を模索してほしいです。HF Playerの場合は最近Airdrop対応になったので、MacからはiTunes無しで転送できるようです(追記:現行バージョンではNe PLAYERもAirdrop対応になりました)。

まあ1000円ですし、多くの人が購入して開発意欲をサポートしてくれることを願います。

追記:
最近のバージョンアップでNe PLAYERはDLNA接続に対応してくれたので、無線LAN圏内であればNASなどに構築してあるDLNAサーバーに保存してある楽曲にアクセスすることが可能です。

バッテリー駆動の2.5インチWi-Fi ハードディスクなどを購入すれば、ホットスポット・アドホック接続にてアプリと連動させることも可能ですので、外出先で無尽蔵なストレージを活用することも可能です。DLNAの問題は、特定のファイル拡張子しか音楽ファイルとして認識しないため、たとえばDFF・DSFなどのDSDファイルを再生できないことです。バッファローやJRiverなど、いろいろな小細工を使ってDSDに対応しているDLNA機器もありますが、そもそも規格外というのは問題です。